コミュニケーションは“言葉”と“共感性”
#コミュニケーションする力を育む
現代社会は、ICカードで電車に乗り、スーパーのセルフレジでモノが買えてしまう、つまり誰かとコミュニケーションをしなくても、生活が出来てしまう時代です。だからこそ、小さいころから、コミュニケーションする力を育んでいくことが大切とも言えます。
コミュニケーションで大事なことは2つあって、1つは“言葉”。もう1つは“共感性”です。両方とも本来は、子どもの中で自然に育っていくものなのですが、こういう時代なので少し意識しておくとよいかもしれません。”言葉“を育むための元となる体験は、親からの語り掛け、おばあちゃんやおじいちゃん、同じくらいの年齢の子ども、そして年上・年下の子どもの言葉を聞き、話し、やりとりすること。生活の中での会話はできるだけ、幅広く、豊かな方が好ましいでしょう。
2つ目の“共感性”。“共感”とは、他人がしていることを見て、自分のことのように感じられることです。この気持ちがどのように起こるか、それを脳科学の観点からいうと、神経細胞“ミラーニューロン”が関係しています。他人がしていることを見て、まるで自身が同じ行動をとっている"鏡"のような反応をすることからそう呼ばれています。ミラーニューロン自体は生まれたときから脳に存在し、家族やさまざまな人との触れ合いの中で「自分」と「他者」の存在を理解するようになり、共感力を育んでいきます。
相手に対して優しくする、これは子どもに生まれつき備わっているものではないようです。子どもは、赤ちゃん時代から親のしていることを基本的にまねて育ちます。共感性を育むために、大人が人に優しく接している様子を子どもにたくさん見せておくということも心がけておくといいかもしれません。
私はBPOという放送倫理の青少年委員会の仕事もしています。芸人さんの罰ゲームなどで、人の痛みを笑いの材料しているバラエティ番組を見るにつけ、子どもたちへの影響が気になります。大人は状況を理解しながら番組を見ていますが、子どもたちには”人の痛み“を笑うことが社会である程度容認されているのだと思ってしまうことが心配でならないのです。
- お話をお聞きした先生
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小児科医お茶の水女子大学 名誉教授榊原 洋一 先生
専門は、小児神経学、発達神経学など。子どもの心と体の発達に関する著書多数。日本子ども学会理事長。発達障害研究の第一人者であり、現在も子どもの発達に関する診察、診断、診療を行う。