赤ちゃんの発達は”多様性”と”なめらかさ”に着目!
首のすわりや寝返り、お座り、立つ、歩くなどの運動行動は、月齢と共に質的にも量的にも変化していく自然なプロセスです。育児書を見ると「○か月になると○○ができるようになる」というふうに「正常発達指標(マイルストーン)」が記載されています。もしかしたら、わが子の成長と照らし合わせて、「うちの子は○か月なのにまだ○○ができない」といった不安を感じる場合があるかもしれません。でも、発達指標は一つの目安にする程度でいいと思います。多くの赤ちゃんが共通してたどる一定の発達経過はありますが、それぞれ個人差があり、育児書に記載されている通りに発達していく赤ちゃんばかりではありません。
「発達は頭から足の方向へ、また身体の中心部分から手や足先に向かって進む」とか「急速に変化しているかと思うと、ある時期は一つの段階にとどまっている時期がある」等々、いくつかの発達の原則があります。また、このような原則と同時に、赤ちゃんの持って生まれた能力と環境要素が相互に作用することによって発達は促されます。そのため発達変化がゆっくりめであったり、ハイハイをせずにつかまり立ちをして歩き出したりする赤ちゃんもいるのです。
赤ちゃんの発達プロセスを観察するポイントとして「多様性」や「なめらかさ」に着目してみてください。赤ちゃんは常に好奇心旺盛で、色々バラエティに富んだ姿勢や行動を示します。例えばお座り姿勢のとき、足を投げ出して座り、おもちゃを持って遊んでいるかと思うと、正座や割り座(正座の状態から両脚を開きその間にお尻をおいた座り方)、横座りもする、というように一つの姿勢や動きだけに偏ることなくその時に応じて自由に変化させます。動き方も最初はぎこちなかったり突発的であったりしますが、次第になめらかになっていくのです。
発達はある日突然何かができるようになるのではなく、連続して積みあがっていくものです。赤ちゃんは常に、自分で動くことを通して感覚運動経験を積み重ねているのです。いつできるかというのは一つの目安ですが、色々な運動機能がどうやってどんなふうに獲得されていくのかという視点で見ていくと、赤ちゃんの発達の魅力に触れることができ、子育てがより楽しいものになると思います。
- お話をお聞きした先生
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理学療法士元 杏林大学 保健学部理学療法学科 教授中野 尚子 先生
赤ちゃんの姿勢運動発達や行動発達、動作分析を長年にわたって行う。日本赤ちゃん学会評議員。現在は東京大学大学院教育学研究科で研究を継続。