知っておくと安心、赤ちゃんの斜視
生後すぐの赤ちゃんの視力は0.01~0.02程度といわれています。生後2カ月位から急速に発達して、3歳で0.5以上になり、大人と同じくらいの視力になるのは8~9歳位になってからです。
3歳位までに両眼視(ものを両目で立体的に見る力)も育っていくのですが、視力や両眼視の発達には影響を受けやすい時期が存在します。目やにや目が赤いなど、見た目でわかりやすいトラブルには気づきますが、視力の異常は見落としがちなため、日ごろから赤ちゃんの視線にも気づかっておくなど周囲の大人が注意を払っておくことが大切です。ここでは、「斜視」についてお話ししましょう。
斜視って何?
目の位置の異常を総称した病名です。斜視で最も多いのが内斜視で、一般的には”寄り目”と呼ばれています。
生後6カ月以内に発症したものを「先天内斜視」、生後6カ月以降に発症したものを「後天内斜視」と分類します。生後すぐは目を開けている時間も短いので、「先天内斜視」は1カ月以降に見つかる場合が多いようです。
斜視かどうかは、どうやって判断するの?
病院では、赤ちゃんから約30cm離れた位置から、ペンライトで両方の瞳孔(黒目の部分)を照らして診察します。反射(白い点)が瞳孔の中心部にあれば正常で、中心からズレがあれば斜視が疑われます。
ご自宅で簡易的に観察する場合は、スマホのフラッシュをたいて、カメラ目線の写真を撮影してみるとよいでしょう。この観察は生後すぐから行うことができます。フラッシュの反射光(白い点)が、両眼の瞳孔の同じところに位置していれば正常と考えられます。
斜視にはどんな種類があるの?
斜視の分類には下記のようなものがあります。
✓ 内斜視(寄り目)
左右どちらかの視線が内側に向かっている状態です。
ペンライトで瞳孔を照らした場合、内斜視の場合は瞳孔の外側に白い点が位置します。
✓ 外斜視(反り目)
左右どちらかの視線が外側に向かっている状態です。
ペンライトで瞳孔を照らした場合、外斜視の場合は瞳孔の内側に白い点が位置します。
✓ 偽斜視
見かけ上、視線がそれて斜視のように見える場合があり、偽斜視と呼ばれます。特に赤ちゃんは、鼻の根元の骨が低く、目頭の皮膚によって両目の内側の白目部分が隠されて、内側に寄っているように見えることがあります。
偽斜視か、そうでないかは判断が難しいので、気になる場合は眼科に相談した方がいいでしょう。
✓ 調節性内斜視
視力が発達し始め、遠視が強くなってくると、物をはっきり見ようと目の調節が過剰に働くことで、内斜視が生じる場合があります。1歳6カ月から3歳ぐらいまでに発症することが多く、メガネなどで視力を矯正すると内斜視がなくなります。初期症状では、正常な状態の時と内斜視の状態の時があり、特に近くを見た時に内斜視になりやすい傾向があります。症状が進んでしまうと遠方を見る時も内斜視になってきます。近くを見る時に内斜視になっているように感じた場合は眼科に相談しましょう。
「斜視かも?」と気になったら
目の位置に異常を感じて気になる場合、完全に治るかどうかは原因にもよりますので、「斜視かも?」と思ったら、早めの小児眼科の受診をお勧めします。少し気になる位であれば、1カ月児健診、4カ月児健診など早い段階の健診タイミングを利用した相談もよいかもしれません。
- お話をお聞きした先生
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小児科医自治医科大学附属さいたま小児医療センター 周産期科新生児部門 教授細野 茂春 先生
新生児医療が専門。長年、NICUで新生児の集中治療と退院した赤ちゃんのフォローアップに従事。日本頭蓋健診治療研究会理事。「乳児頭のかたち外来」も担当し、頭の形を心配する親の気持ちに向き合う。