赤ちゃんの発達を考える/ 赤ちゃんの記憶
赤ちゃんのこと

赤ちゃんの記憶

#赤ちゃんの発達を考える

自分の最初の記憶は生まれてすぐ産湯につかった時のことだと、小説家の三島由紀夫は自伝的小説の中に書いています。

生まれたばかりの赤ちゃんでも視力はありますが、まだぼんやりしたものです。生まれた時の助産師さんの顔を覚えていたり、三島由紀夫のように産湯につかった桶の光景を覚えているというのは、記憶がつくられるために必要な脳の発達や働きから考えるとあり得ない話です。科学的根拠が見つかりません。

胎児期の記憶があるという人や生まれた時のことを覚えているという人もまれにいらっしゃいます。これは、大きくなってから見た写真や当時のことを何度も繰り返して聞いたりしているうちに本当にあったように思ってしまったのではないかと思います。個人差はありますが、人の記憶は3歳前後から作られるというのが一般的な考え方です。

記憶には「手続き記憶」や「短期記憶」「長期記憶」など色々な種類のものがあります。

赤ちゃんが最初に身につける記憶は、「手続き記憶」と呼ばれるもの。おっぱいをもらう、おむつを替える、など日常生活に繰り返し起こる体験から、からだが覚える記憶です。「手続き記憶」から、だんだん、赤ちゃんは誰かのすることを真似たり、同じ言葉を繰り返したりすることが出来るようになります。これは、短期記憶ができるようになったからともいえます。

こういった「手続き記憶」や「短期記憶」が身に付いてきたことがわかるのが、「いない、いない、ばあ」という遊びです。生後7~8カ月頃になると、「いない、いない」の次は「ばあ?」という「手続き」を短時間、覚えていられるからこそ楽しめる遊びです。大人の場合は、「手続き記憶」や「短期記憶」などの中枢が、脳のどこにあるかわかっていますが、赤ちゃんの場合は、「いない、いない、ばあ」の遊びが明確に「手続き記憶」なのか、「短期記憶」なのかは分けづらく、まだそこまで脳の役割が分化していません。

「昨年、ハワイ旅行に行って楽しかった」など、見たり、聞いたり体験した出来事を記憶するのが「エピソード記憶」です。いつ、どこで、といった場所や時間についての情報が含まれる思い出話のような記憶なので、これはある程度言葉の理解が出来るようになってから残っていくものになります。

赤ちゃんは色々な経験を積み重ねながら、少しづつ記憶の力を伸ばしていきます。