出産前に読んでほしい”ママのこと””赤ちゃんのこと”/ 未来への保険「さい帯血」 その3 「さい帯血」保管と「さい帯」保管
ママのこと

未来への保険「さい帯血」 その3
「さい帯血」保管と「さい帯」保管

#出産前に読んでほしい”ママのこと””赤ちゃんのこと”

「未来への保険「さい帯血」 その1 「さい帯血」って、なに?」「未来への保険「さい帯血」 その2 どこに預けるの?」で「さい帯血」についての理解は少し深まったでしょうか。

最近は、「さい帯血」保管を検討される際に、「さい帯」保管を希望される方も増えてきています。ここでは、その違いについてご説明したいと思います。

「さい帯」保管とは?

へその緒のことを「さい帯」ということはその1で触れましたが、「さい帯」保管とは、へその緒そのもの(中の血液以外)を保管することです。一方、その1その2でお話した「さい帯血」保管とは、へその緒の中にある血液を取り出し、保管することを指します。

「さい帯」保管は、具体的にいうと、分娩時に「さい帯」の一部を取って、必要とする部位の組織を専門機関で処理・小分けし、凍結保存をします。そして、必要となった時にそれを解凍し、「さい帯」の中に含まれる「間葉系細胞」を培養して治療に活用するのです。

聞きなれない言葉、「間葉系細胞」とは?

「間葉系細胞」とは、とてもミラクルな能力を秘めた細胞で、軟骨や神経・筋肉・血管内皮細胞・幹細胞など、様々な細胞に変化することができます。組織を修復する能力や、炎症を抑える能力も備える万能細胞といえます。

この細胞は、骨や歯の神経、脂肪組織などにも存在しますが、「さい帯」由来のものはとにかく優秀なのです。
増殖しやすく、免疫反応を引き起こしにくい特性を生かし、潰瘍性大腸炎、膝関節炎、事故などによる脊髄損傷、パーキンソン病、脳性まひ、糖尿病などの症例への活用研究もすでに始まっています。

「さい帯」と「さい帯血」、どちらを保管したほうがいい?

この2つは使用目的や役割が異なるので、難しい判断になります。「さい帯血」は血液成分に、「さい帯」は軟骨・神経・筋肉・血管皮細胞・幹細胞などさまざまな組織細胞に変化させて、治療につなげていくことになります。

そして、「さい帯血」は、細胞培養をしないので原則1 回のみの使用、「さい帯」は、小分けにして凍結するので、凍結個数分が使用可能です。

可能であれば両者とも保存することが我が子への一生の贈り物になりますが、費用もかかることですので、家族でよく話し合ってもらえればと思います。「さい帯」「さい帯血」保管を扱う専門機関からもしっかり説明を受けて、後悔のないように決めてください。

昔から日本では、健康を祈願して、へその緒を桐箱に入れ、大切にとっておく風習があります。
再生医療のようなものがなかった時代から、へその緒が秘める何かを感じ取っていたのかもしれませんね。

お話をお聞きした先生
産婦人科医かしわざき産婦人科柏崎 香織 先生

最新の設備と専門機関との密な連携で妊婦さんの安全・安心な出産を第一とした診察を行う。自身も二人の子どもの母親であり、女性ならではの視点で妊婦さんに寄り添う。