令和流 妊娠中の体重管理 その3
妊娠前の体格で異なる体重増加の目安
妊娠中はどれくらい、体重が増えてもよいのでしょうか?
それは、妊娠前の体格で異なります。普通体重(体格指数BMI=18.5~25)の場合、理想的な体重増加の目安は、+10kgです。まずは、あなたの妊娠前の体格の目安(BMI)を確認してみましょう。
妊娠前のBMIは?
BMIとは身長と体重から算出される肥満や低体重(やせ)の測定に用いられる指標で、以下の式で求められます。体重は妊娠前の体重で計算してみてください。
BMI(体格指数)=
[体重(kg)]÷[身長(m)×身長(m)]
例)
妊娠前の体重が50kg、身長が157cmの場合、BMIは20.3になります。
50÷(1.57×1.57)=20.3
導き出したBMIの値は、以下の基準に分類されます。
- 18.5未満…低体重(やせ)
- 18.5以上25.0未満…普通体重
- 25.0以上30.0未満…肥満(1度)
- 30.0以上…肥満(2度以上)
妊娠中はどれくらい、体重が増えてもいいの?
2021年3月に日本産婦人科学会が公表した「妊娠中の体重増加の目安」が下記の表になります。令和になって出されたこの新しい目安では、従来の基準より体重増加量が2~3kgずつ引き上げられています。
日本は、2500g未満で生まれる低出生体重児の割合が高く、4000g以上で大きく生まれた巨大児よりも、低出生体重児の方が将来、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病になるリスクが高くなることがわかっています。
これまでの、日本における妊娠中の厳格な体重制限が、結果として低出生体重児を増やし、生まれてくる赤ちゃんの将来の健康に悪影響を与えてしまうという懸念から、この新しい体重増加の目安に変更されました。
令和流の新しい体重管理は、厳格に体重増加を管理するというより、個人差を考慮したゆるやかなものになっています。
妊娠中の体重増加の目安*
妊娠前体格** | BMI kg/m² | 体重増加量の目安 |
---|---|---|
低体重 | <18.5 | 12~15kg |
普通体重 | 18.5 ≦ ~ <25 | 10~13kg |
肥満(1度) | 25 ≦ ~ <30 |
7~10kg |
肥満(2度以上) | 30 ≦ | 個別対応(上限5kgまでが目安) |
** 体格分類は日本肥満学会の肥満度分類に準じた。
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210616_shuuchi.pdf
国立成育医療研究センターと九州大学の研究チームが共同で、10万人の妊婦健診情報から、BMI別に妊娠週数別の体重増加量を算出し、「妊娠中の体重管理曲線」を2021年に公開※1,※2しています。
具体的に何週にどの程度の体重増加が望ましいかの範囲をグラフで示しており、これまで日本人向けのものがなかったので参考になると思います。是非下記のホームページをのぞいてみてください。
https://www.ncchd.go.jp/press/2021/210928.html
※2 妊娠中の体重管理曲線
https://www.ncchd.go.jp/scholar/research/section/socialmed/20210916.pdf
妊娠中の体重管理は、将来の赤ちゃんの健康のためにもママの健康のためにも大切なこと。ここからは、体重管理に重要な食事のポイントについてお話します。
食事のポイント
【初期のつわりの時期】
妊娠初期に必要なエネルギー量は妊娠前のプラス50kcalでOKです。食べられないタイプの方は、一般的に体重減少しますので体重は気にしなくて大丈夫。食べたい時に食べたいものを食べたい量を摂りましょう。ただ、食べていないと気持ち悪いからと、ちょくちょく口にしている人は要注意。体重計に毎日同じ時刻に乗る習慣をつけることをお勧めします。
【つわりが落ち着いてから妊娠28週まで】
食欲も出てきますが、食欲に任せて量を食べないようにしてくださいね。カロリーも大事ですが、栄養面を重視しましょう。注意したいことは、
- ・鉄分・タンパク質はしっかり摂る。
- ・体重が気になってきたら、炭水化物(ごはん・うどん・パスタなど)は分解され糖分になるので控える。
- ・やわらかい食材は、すっと胃に入ってつい食べすぎてしまうので、硬い食材をよく噛んでゆっくり食べる。
- ・根菜は便秘にも有効なので工夫して取り入れる(便秘といえば…発酵食品も上手に摂って下さい)
【妊娠28週以降】
子宮がかなり大きくなり、胃や腸が圧迫され、思うように食べられなくなります。消化の良いメニュー・調理方法にして、1回の食事を「腹6分目」に、そして1日3食でなく、4~5回に分けて食べるといった工夫をしましょう。
普通体重(BMI:18.5以上25.0未満)の方は、妊娠36週までに+8kgなら、理想的です。妊娠36週~出産までは、おなかの中の赤ちゃんにも脂肪がつき、ふっくらする分、ママの体重も週500gほど増えます。ちなみに私は、妊娠2回とも+9kgに抑え、産後も妊娠前の体重をキープして還暦を迎えております。
食事はバランス良く、きちんと食べることが大切
現代人の通常の食事は脂肪が多く、野菜が不足しがち。働いている妊婦さんはどうしても忙しいので、朝は菓子パンとコーヒーだけということもあるでしょう。でも、それだとカロリーは摂れても栄養不足になってしまいます。
カロリーではなく栄養のことを考えて、ごはんを中心にした和食のメニューを心がけ、できれば副菜をひとつ増やすなどして栄養のバランスを心がけるとベストです。
赤ちゃんの味覚も妊娠中にママが食べるものに大きな影響を受けると言われています。忙しいときは、味の濃いレトルト食品を利用することもありですが、休日で時間があるときは、出汁やブイヨンを効かせてみましょう。日本人の味覚はそれを味わえる繊細さを持っています!
妊娠中のママが食べるものが、おなかの中の赤ちゃんの体を作り、味覚を育てることをどうぞ忘れずにいてください。
- お話をお聞きした先生
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産婦人科医かしわざき産婦人科柏崎 香織 先生
最新の設備と専門機関との密な連携で妊婦さんの安全・安心な出産を第一とした診察を行う。自身も二人の子どもの母親であり、女性ならではの視点で妊婦さんに寄り添う。