令和流 妊娠中の体重管理 その2
小さく生まれる赤ちゃんが増えている?
診察をしていると、最近は3000gを超えて生まれる赤ちゃんが少なくなったと感じます。
妊娠前、細身のGパンが似合う方は、骨格(特に骨盤)が華奢な方が多く、子宮もコンパクトです。日本人の体型も変わってきたこと、それに伴う赤ちゃんの変化を実感します。
細身だと服を素敵に着こなせるのは良いのですが、おなかの中でしっかり赤ちゃんを育てるだけの体力・骨格がないと3000g超えの新生児の出産は大変だと心配になります。
20代女性の5人に1人が“やせ”(BMI※118.5未満)
令和元年 国民健康・栄養調査より
若い女性の“やせ”は、早産や赤ちゃんが小さく生まれるなどのリスクを高めることが報告されています。朝食を食べない率が高く、受胎前後に重要な働きをする「葉酸」を含む野菜をとる量も20歳代が最も少ないこともわかっています。
こうした妊娠前から妊娠期におけるエネルギーや栄養素摂取量の不足はおなかの赤ちゃんの発育に影響を与えることがあるため、厚生労働省も「健やか親子21」※2などで注意喚起を発信しています。
※2 厚生労働省「健やか親子21」https://sukoyaka21.cfa.go.jp/infographic/thema2/
日本で生まれる赤ちゃんの10人にひとりが低出生体重児
令和3年 人口動態統計より
実際に小さく生まれる赤ちゃん、低出生体重児(出生時の体重が2500g未満)の割合は増加傾向にあります。最も少なかった1975年の5.1%から増え始め、2004年以降は9.5%前後で、新生児10人にひとりは2500g未満で生まれるという高止まりの状況です。これは先進国の中でも注目される高い割合です。
妊娠中に体重が増えないと赤ちゃんの発育に影響も
妊娠中は、ママが摂った栄養がおなかの中の赤ちゃんへ送られるため、栄養不足のママの場合、おなかの中の赤ちゃんにも十分な栄養が届かなくなります。おなかの中での発育が十分でなく低出生体重で生まれた場合、大人になって生活習慣病の発症リスクが高まる可能性があることは、多くの先行研究で報告されています。※3
それによると、おなかの中の赤ちゃんが栄養不足の状態にあると、生き抜くために少ない栄養で済むよう、赤ちゃんの代謝系が変化してしまうことがわかっています。これは生まれてからの生活においては、必要以上に栄養や脂肪をためこむことにつながり、早い段階で肥満などの生活習慣病などを発症するリスクが高まってしまうのです。※4
「小さく産んで、大きく育てる」という言葉がよく聞かれた時代がありましたが、様々な研究報告をもとに考え方が変化してきています。「令和流 妊娠中の体重管理 その3」では、2021年3月に公表された日本産婦人科学会が推奨する妊娠中の体重増加の目安についてご紹介します。
https://www.ncchd.go.jp/center/activity/kokoro_jigyo/h30_houkoku_2.pdf
※4 福岡秀興,早稲田大学理工学術院総合研究所,「胎児期の低栄養と成人病(生活習慣病)の発症」, 栄養学雑誌Vol.68 No.1,3~7(2010)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi/68/1/68_1_3/_pdf
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210402-1_kourousho.pdf
- お話をお聞きした先生
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産婦人科医かしわざき産婦人科柏崎 香織 先生
最新の設備と専門機関との密な連携で妊婦さんの安全・安心な出産を第一とした診察を行う。自身も二人の子どもの母親であり、女性ならではの視点で妊婦さんに寄り添う。