令和流 妊娠中の体重管理 その1
体重増加は何のため?
妊娠に伴い、ママの体型は当然変化します。
【赤ちゃんがおなかの中で発育する分+α】の体重も増えます。
「産後に元の体型に戻れるかな?」という点を気にされる方も多いのですが、体重増加の管理をすることは、何より、おなかの赤ちゃんの健康・安産に大きく影響します。
妊娠中の体重増加は、何のため?
必ず増加する体重の内訳は、個人差はありますが、だいたい下記の通りです。
- ・赤ちゃんの体重 約3kg(臨月の時点で)
- ・胎盤 約0.4~0.5kg
- ・羊水 約0.5kg
- ・血液(おなかの赤ちゃんにも血液を送るため、ママの体を流れる血液量は妊娠していない時より3~4割増加)
- ・皮下脂肪など(栄養を蓄えるために皮下脂肪がつき、乳腺も発達)
妊娠・出産・育児は体力勝負。赤ちゃんの成長分だけでなく、何時間、時には数日もかかる出産を乗り切るためにも、産後に昼も夜もなく赤ちゃんをお世話するためにも、ママのからだに必要なエネルギーも蓄えておく必要があるのです。
太りすぎのリスク
妊娠中に12kg以上太ってしまうと、ママのからだにも赤ちゃんにもトラブルが起きる確率が高くなります。かつては、妊娠中毒症とも呼ばれた「妊娠高血圧症候群」のリスクが高くなり、放っておくと胎盤の機能が低下して、赤ちゃんに十分な酸素や栄養素が送れなくなり、ママも赤ちゃんも命にかかわることもあります。また、妊娠性の糖尿病になりやすく、おなかの赤ちゃんまで巨大児になり、難産になる確率が高まります。産道に余分な脂肪がついて、赤ちゃんが下りにくくなり、帝王切開になる率も上がる傾向にあります。他にも下記のようなトラブルを招きやすくなります。
- ・微弱陣痛になりやすい
- ・出血が多くなりやすい(経蟄分娩・帝王切開ともに)
- ・帝王切開の傷が治りにくい
- ・無痛分娩および帝王切開の時、麻酔が効きにくい
- ・肺塞栓・血栓症・脳梗塞の合併リスクが上がる
- ・分娩時に、経過異常に気が付きにくく、初動が遅れ重症化を招く
やせすぎもNG!
産休ギリギリまで仕事を頑張りすぎ、食事が十分に摂れない・ストレスが溜まっているといった原因で体重が増えない方もおられます。仕事は、この時期、頑張りすぎないでください。同じ仕事でも、こなせる人、きつい人それぞれです。自分にとって「きつい」と思ったら、パパや上司、周囲の人にSOSを出しましょう。食事が摂れず、ママが栄養不足になると、当然赤ちゃんにも十分な栄養が届きません。
近年、やせすぎの妊婦さんが増え、それに伴って低体重で生まれる赤ちゃんが増えていることが問題になっています。(→「令和流 妊娠中の体重管理 その2」参照)おなかの赤ちゃんのためにも、妊娠中のダイエットはNG。
妊娠中は「やせすぎず、太りすぎず、体重は適度に少しずつ増えていくこと」が理想です。
- お話をお聞きした先生
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産婦人科医かしわざき産婦人科柏崎 香織 先生
最新の設備と専門機関との密な連携で妊婦さんの安全・安心な出産を第一とした診察を行う。自身も二人の子どもの母親であり、女性ならではの視点で妊婦さんに寄り添う。