過剰な心配はご無用!
近年、出生数も少なくなって、赤ちゃんと身近に触れる機会がないままに出産を迎える方も多いかもしれません。
そんな中で出産される方々に伝えておきたいことがあります。
まず、日本は赤ちゃんを安全に生むことができる安全な医療環境があること。これは大きな安心材料です。
現代の日本において、出生時に赤ちゃんが命を落とすリスクはとても少なくなっています。戦後(1950年)、日本の乳児死亡率は1000人に対し60人でしたが、現在(2021年)では1.7人で※1、世界の平均(2020年ユニセフ)は26人です。日本は世界で極めて乳児死亡率が低い国で、衛生状態もよく、基本的に安心して赤ちゃんを産むことができます。
出産は分娩時の出血もありますし、一定のリスクは現代もあります。ただし、日本においては基礎的な医療は充実していますし、命に関わるような事態は少なくなりました。定期的に妊婦健診を受けて、母子の体の状態が管理できていればほとんどの場合、心配いりません。コロナ禍になり、妊婦さんが定期的に健診を受けていない傾向もあるようです。安全な出産のために、定期的な妊婦健診はとても大切です。必ず受けてください。
もう一つ、伝えておきたいこと、それは“赤ちゃんは生きるための準備や能力を備えて生まれてきている”ということです。“赤ちゃん”は大人とは違う色々な体の特性を持って生まれてきますので、“未熟で弱いもの”というイメージが強くあるかもしれません。しかし、成熟してはいないにしろ、基本的な「呼吸をする」「体温を保つ」「栄養を摂取する」という生きるために必要な機能をきちんと備えて生まれてくるので、神経質になりすぎることはありません。
赤ちゃんを守りたいという母親の心配は自然の摂理です。一般的に快適な環境の中で生活している限り、過剰な心配はいりません。力を抜いて、頑張りすぎず、おおらかに子育てを考えてください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/index.html (参照2023-03-10)
- お話をお聞きした先生
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小児科医お茶の水女子大学 名誉教授榊原 洋一 先生
専門は、小児神経学、発達神経学など。子どもの心と体の発達に関する著書多数。日本子ども学会理事長。発達障害研究の第一人者であり、現在も子どもの発達に関する診察、診断、診療を行う。